「竜馬がゆく」 文春文庫 司馬遼太郎 著
竜馬がゆく 全8巻セット (新装版) (文春文庫)
ついに読み終わったあ~!!三ヵ月四カ月かかったかも…。八巻です。初めての歴史小説です。素晴らしい本に出会えました。というか、素晴らしい人物に会えました。竜馬に惹かれっぱなしです。すごい。とても参考になり、勇気づけられもした。
竜馬の一貫した考えの一つに、「自分は何かを成すために生れてきた」という想いがあったと思う。他の志士たちがどんどん行動を起こしていく中、まだ自分の成す時期ではないと自制して、ついに自分しかできないことを成し遂げた。時勢というのも重視していた。
“薩長同盟”、“大政奉還”どちらも竜馬なしでは遂げられなかった。どちらも、未来を拓くものである。
なぜこれらを成せたのか。竜馬が、当時の人より一段高いところから世の中を見ていたからではないかと思う。世間一般の常識にとらわれず、自分の頭で体で物事を判断していったからだろう。その判断の基準は、「何を成すか」である。本にも書かれていたが、竜馬は初めての“日本人”だろう。この日本列島を一つの国であり、自分はその国の一員であるという認識。周囲とは考えが異なるが、気がつけば周りは竜馬の魅力に引き込まれている。そして、己の道を貫いた。学ぶところが多い。
以下、心にきた部分を記す。
「禅寺に行って、半刻、一刻の座禅をするよりも、むしろそのつもりになって歩けばよい。いつ、頭上から岩石が降ってきても、平然と死ねる工夫をしながら、ひたすらにそのつもりで歩く。岩石を避けず、受け止めず、頭上にくれば平然と迎え、無に帰することができる工夫である。」
「衆人がみな善をするなら、おのれひとりだけは悪をしろ。逆も、またしかり。英雄とは、自分だけの道を歩くやつのことだ。」
「私は、窮屈なのが大嫌いなのだ。こうして天地の間に寝ているのが一番いい」
「事を成すのは、その人間の弁舌や才智ではない。人間の魅力なのだ。」
「行動はわしに任せ、噂は人の口に任せる。」
「一つしかないからどんどん投げ込むんだ。一つしかないと思って尼さんが壺金でも抱いているように大事にしていたところで、人生の大事は成るか。」
「人の命は事を成すためにある」
「なまの人生は、自分で、自分のがらにかなう舞台をこつこつ作って、その上で芝居をするのだ。他人が舞台を作ってくれやせぬ」
「事を成さんとすれば、智と勇と仁を蓄えねばならぬ」
「時期がくる。それまでは沈黙して、ただ行動準備をしているにかぎる。」
「時流に同調することが正道ではない。五年後には、天下ひひとしてこの竜馬になびくでしょう」
「天下がこれを非とするも自分が正しいと思えば断乎として往くのが男である」
「よほどの大事の瀬戸際でない限り、座興の議論などに勝っても仕様がないもの」
「政治というのは、庶人の暮らしを立てさせてゆくためにあるものだ。」
「ああいう場合によくないのは、気と気でぶつかることだ。闘る・闘る、と双方同じ気を発すれば気がついたときには斬りあっているさ」
「闘る・逃げる、と積極、消極の差こそあれ、おなじ気だ。この場合はむこうがむしょうやたらと迫ってくる。人間の動き、働き、の八割までは、そういう気の発作だよ。ああいう場合は、相手のそういう気を抜くしかない。」
「人がことを成すには天の力を借りねばならぬ。天とは時勢じゃ。時運ともいうべきか。時勢、時運という馬に乗って事を進めるときは、大事は一気呵成になる。その天を洞察するのが、大事を成さんとするものの第一の心掛けじゃ。」
「人間、生死などを考えるべきではないな」
「寿命は天にある。人間はそれを天にあずけっぱなしにして、仕事に熱中してゆくだけでいい。」
「志を持って天下に働きかけようとするほどの者は、自分の死骸が溝っぷちに捨てられている情景を常に覚悟せよ、勇気ある者は自分の首がなくなっている情景を常に忘れるな、ということです。」
「勝は、となりの大清帝国がなぜ外国に侵略されつつあるかを知っている。すべて国内の体制がもろく、官人党を結び、党利を考えて国家を考えざるがためだ。」
「勢いである。人の運命も勢いに左右され、一国の運命も勢いに左右される。」
「こまごまとした議論よりまず玉をとることだ」
「気の弱きは善多く、気の強きは悪多し」
「西郷の哲学では、愛嬌とは女の愛嬌ではない。無欲と至誠からにじみ出る分泌液だと思っている。」
「この歴史の緊張期に必要なのは、何もしない思慮深い老人よりも、むしろああいう狂気なのではないか」
「人間、不人気ではなにも出来ませんな。いかに正義を行おうと、ことごとく悪意にとられ、ついにはみずから事を捨てざるをえなくなります。」
「金より大事なものに評判というものがある。世間で大仕事を成すのにこれほど大事なものはない。金なんぞは、評判のあるところに自然とあつまってくるさ」
「人間というものはいかなる場合でも好きな道、得手の道を捨ててはならんものじゃ」
「竜馬の行動が一日遅れれば一日歴史が遅れる、という事態になっていた。」
「男はどんなくだらぬ事ででも死ねるという自信があってこそ大事を成し遂げられるものだ」
「事の成るならぬは、それを言う人間による」
「生死などは取り立てて考えるほどのものではない。何をするかということだけだと思っている。世に生を得るは事を成すにあり」
「仕事のことさ。仕事と言っても、あれだな、先人の真似ごとはくだらぬと思っているな。釈迦や孔子も、人まねでない生き方をしたから、あれはあれでえらいのだろう」
「純情だけでは、人間の乱は鎮められんからな」
「古来、英雄豪傑とは、老獪と純情の使い分けのうまい男をいうのだ」
「利が、世の中を動かしている」
「時勢は利によって動くものだ。議論によっては動かぬ」
「経済が時代の底をゆり動かし、政治がそれについてゆく。」
「仕事というものは騎手と馬の関係だ。いかに馬術の名人でもおいぼれ馬に乗ってはどうにもならない。少々下手な騎手でも駿馬にまたがれば千里も行けるのだ。桂や広沢における長州藩、西郷や大久保、五代、黒田における薩摩藩は、いずれも千里の良馬である。土州浪士中岡慎太郎にいたっては、馬さえないではないか。徒歩でかけまわっているようなものだ。
(男の不幸は、馬を得るか得ぬかにある)
竜馬にも、藩はない。しかしこの男は中岡と違って“亀山社中”という、私藩ともいうべき馬を、独力でつくりあげようとしている。」
「焦っても事は成らん」
「男子は決して困った、という言葉を吐くな。どんなことでも周到に考え抜いたすえに行動し、困らぬようにしておく。それでもなおかつ窮地におちた場合でも“困った”とは言わない。困った、と言ったとたん、人間は智恵も分別も出ないようになってしまう。」
「人間、窮地に陥るのはよい。意外な方角に活路を見いだせるからだ。しかし死地におちいればそれでおしまいだ。だから俺は困ったの一言は吐かない。」
「武市半平太という男は、釈迦、孔子、ソクラテスの類いだ。おれとは人間の種類が違う。おれは秦始皇、漢高祖、織田信長、ワシントンの類いだ。人間の悪や不潔や不純を使って仕事をする」
「男は、わが思うおのれの美しさを守るために死をも厭わぬものぞ」
「へんぺんたるわれら郷士の感情は、新しい日本の築きあげのためには捨てねばならぬ。」
「おれは後藤を使う。後藤を殺してしまえば使えまい。人間の死体ほど役立たずなものはないからな」
「双方、下心があってのことさ。後藤もわしを利用しようとする。わしも後藤を利用しようとする。そういう必要が生じてきたというのは、時運というものだな」
「竜馬の論でいえば時運をいち早く洞察してそれを動かすものこそ英雄だという。」
「まじめでよいときもある。しかしまじめがかえって事をこわすときがある」
「ただ将来のみを語った。これは人物でなければできない境地だ。」
「人はみな平等の権利を持つ世におれはしたい」
「世に活物たるもの、みな衆生なれば、いずれを上下とも定めがたし。今生の活物にてはただ我をもって最上とすべし」
「まんじゅうの形はどうでもいい。双方、舌を出して餡がなめられればいいのだ」
「人の世に、道は一つということはない。道は百も千も万もある。」
「面白き、こともなき世を、面白く、住みなすものは心なりけり」
「物事に惚れるような体質でなければ世上万般のことは成りがたい」
「“坂本さん、あんたは孤児になる“ “覚悟の前さ”」
「時流の孤児になる。時流は今、薩長の側に奔りはじめている。それに乗って大事を成すのも快かもしれないが、その流れをすて、風雲の中に孤立して正義を唱えることのほうが、よほどの勇気が要る。」
「回天はついには軍事力によらずば成りがたいだろう。その肚はある。しかし、万に一つそれを回避できるとすれば、その策をまず施さねばならぬ」
「とにかく、薩長を戦争で勝たせてしまえば英国にのみ利が行き、まずいことになる。戦争によらずして一挙に回天の業を遂げれば、英仏とも呆然たらざるを得ない。日本人の手で日本人による独自の革命が遂げられるのだ。その革命には徳川慶喜でさえ参加させてやる。かれを革命の功臣にさせてやる。されば、英仏ともあっけにとられて、手を出すすきがあるまい。」
「批評は頭脳の仕事である。その施すべき時機を見つけるのが、実行者のかんというべきであろう。」
「腐ってきたと言っていい。自分の情熱を満足させる場がないために情熱が内攻して自家中毒を起こし始めている」
「しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事を見れば、道はつねに幾通りもある。」
「ただ安政以来、日本史上最大の混乱の中で奔走してきたこれらの男どもは、その圭角と傾斜と破綻と、そして露わにむきだした真実のために非業の中で死んだ。」
「一つの概念をしゃべる時、その内容か表現に独創性がなければ男子は沈黙しているべきだ」
「財政の独立なくしては、思想の独立もなく、行動の自由もない」
「こういう話は話す者も聞く者もつい昂奮しがちなものだ。しかし昂奮すれば理の筋がわからなくなる。“例えばこの庭をながめ、楊梅の話をしながら、それと同じ調子で話し合ってみる。すると物事の道理が明らかになってくる。そういうものでありましょう。」
「幕府衰亡という問題を冷厳な社会科学的な態度で語り合う」
「古来、武士は主家あるを知って国家あるを知らなかった。忠義は知っているが、日本を愛することは知らない。」
「日本人が有史以来、初めて国際社会の中に自分というものを、否応なく発見させられた」
「この前古未曾有の時代に、鎌倉時代や戦国時代の武士道で物を考えられてはたまらぬ。日本にとっていま最も有害なのは忠義ということであり、最も大事なのは愛国ということです。」
「議論に勝つということは相手から名誉を奪い、恨みを残し、実際面で逆効果になることがしばしばある」
「仲良く、などは、よほどの悪趣味か無智のしるしですよ。」
「若者が物事を真剣に考え、徹底的に考え抜くときに、もはやいい加減な調和の中などで仲良く暮らしてゆけない」
「物を考えぬ阿呆どもだけが仲良し」
「男子はすべからく酒間で独り醒めている必要がある。しかし、同時に、大勢と一緒に酔態を呈しているべきだ。でなければ、この世で大事業は成せぬ」
「当初我々は、貴官が交渉の目的でこの土佐にやって来られると伺っていたが、どうやらそうではないらしい。いやしくも拙者は使臣である。それを前にただいまのお手前の無礼兇暴の態度はどうであろう。されば御目的は交渉ではなく挑戦と見た。挑戦ならばこれ以上拙者がここで座っているのは無用である。談判の中止を希望する。」
「何事も気にかけずぼんやり休養」
「お互い、あと五十年の寿命があっても無意味である。時勢の解決はここ一、二年のうちにつく。だからせめて二、三年生きられるように努めてくれ」
「たれが、古い歴史にとどめを刺し、新しい歴史を興すか」
「思想は人それぞれあってよく、そういう議論は閑人に任せておけばよい。歴史はいまや思想や感傷を超えてしまった。もはやこのぎりぎりの段階では歴史とは物理現象のようなものである。」
「ここ数日の辛抱は日本百世のためだぜ」
「その慶喜の心中の激痛は、この案の企画者である竜馬以外に理解者はいない。」
「おれは日本を生まれ変わらせたかっただけで、生まれ変わった日本で栄達するつもりはない」
「こういう心境でなければ大事業というものはできない。おれが平素そういう心境でいたからこそ、一介の処士にすぎぬおれの意見を世の人々も傾聴してきてくれた。大事を成し遂げ得たのも、そのおかげである。」
「仕事というものは、全部をやってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はたれでも出来る。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。そうでなければ大事業というものはできない」
「竜馬に言わせれば、自分の命にかかずらわっている男にろくな男はいないというのである。」
「われ死する時は命を天にかえし、高き官にのぼると思いさだめて死をおそるるなかれ」
「世に生を得るは、事を成すにあり」
「死生のことを考えず事業のみを考え、たまたまその途中で死がやってくれば事業推進の姿勢のままで死ぬ」
「生死は天命にある。それだけのことだ。」
「時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し、そして未来へ押しあけた。」
あとがきから引用
「悪人の霊魂を祈らば我に智恵よくつくものなり。また釈迦、アレキサンダー、秀吉、始皇。而して泉の如く策略も亦生ず」
「薄情の道、不人情の道、わするることなかれ」
「義理などは夢にも思うことなかれ。身をしばらるるものなり」
「衆人みな善をなさば我一人悪を為せ。天下のことみなしかり」
「私心を去って自分をむなしくしておかなければ人は集まらない。人は集まることによって智恵と力が持ち寄られてくる。仕事をする人間というものの条件のひとつなのであろう。」
竜馬がゆく 全8巻セット (新装版) (文春文庫)
以上
ありがとうございました。
またね***