第二次世界大戦中、約6000人のユダヤ人にヴィザを発行したことで世界的評価の高い日本人の一人です。
これまでは、ヒューマニストとしての彼が全面的に評価されていたが、インテリジェンス・オフィサーという側面からこの偉人をみていこうというのが本書の趣旨。
確かに、あの複雑な国際情勢下にあったヨーロッパで、当時公には認められてなかったヴィザを発行し続けるには諜報に秀でてないとできないことだな~とタイトルをみてすぐ買っちゃいました。
本書を読んで感じたことは、もやもやしてはっきりしないような中にも関わらず一人の人間の志が垣間見えるという感じだろうか。
実際著者は、少ないながらも当時の杉原さんに関する情報を集め、それらを組み立てている。だから、所々情報がない部分もあり、推測するしかない個所が少なくない。そこに、著者自身の私情も少しは影響しているだろうが、そういう理由から以上のような感想を得た。
諜報の世界でよくあることであるが、諜報は優秀だがその入手した情報をトップがうまく活用できないということがある。諜報は諜報員の仕事だが、そこから得た情報をどう使うかはその国の政治家の仕事である。政治は国内国外どちらにも影響するし、なかなか一筋縄ではいかない。当時の日本もそうで、杉原さんも政治に翻弄される時期があった。
優秀なインテリジェンス・オフィサーは、たいていトップの無能でうまく能力を発揮できなくなりました…。といった感じで、ぱっとしないままであることが多い。もちろん、上司も優秀ならそのまま諜報員として全うする。
しかし、杉原千畝は違う。
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国のトップが頭で、諜報などは手足のようなものだ。
“兵隊は考えない”というのと同じで、インテリジェンス・オフィサーも国のためにやっているのである。
だから、国の指示がないと何もできない、というか何もしないのが普通。
しかし、杉原さんは違った。
彼には、国への忠誠心のほかに、一人の人間としての確固たる価値観があった。仕事と個人(人間)としての価値観が異なることが世の中には多くある。この自分の中にある矛盾に悩まされる人も多いと思う。だけど、彼はどちらも成すよう選択し行動した。
実際は、国の仕事より人間としての使命を優先してヴィザを発行していた。国へは、細かなアリバイを作り、だましだましやっていたのである。そんな彼もついに、ヴィザも発行できなくなるが、ヴィザ発行の代わりとなる渡航許可証を発行する。そして、最後には、次の赴任地へ行く列車の出発まで窓越しに渡航許可証を発行し続ける。
とても胸が熱くなった。
杉原さんが晩年に書いた「決断 外交官の回想」とういう手記にこう記されている。
「全世界に隠然たる勢力を有するユダヤ民族から、永遠の恨みを買ってまで、旅行書類の不備とか公安上の支障云々を口実に、ビーザを拒否してもかまわないとでもいうのか?それが果たして国益に叶うことだというのか?」
そして著者は、
“外交官とは、国家を代表して外国との交流の最前線に立ち、母国の国益に貢献するものである。・・・。ユダヤ人に手を差し伸べることが日本の将来に有益であるとの信念を持っていた。それはインテリジェンス・オフィサーとして培った国際感覚がもたらす優れた先見性でなくてなんであろうか。“
と述べている。
なるほど。多くの、多様な国籍の人とのコミュニケーションからなる諜報。それは単なる情報収集だけではなく、いや、だからこそ広い視野と深い洞察力が養われる。そして、そこから生み出されるのは最も痛みが少なく明るい未来。
仕事と人間としての価値観を同化していたといえるかもしれない。
もっとも評価できるのは、実行したことである。
自分の価値観に従って。
自分の能力をフルに使って、明るい未来を作った。
一人の兵隊ではなく、一人の考えて実行する人間だったというところがすばらしい。
とてもありがとうございます。
日本語おかしいな…(・_・;)
以上
またね***
PS:昨年の年間目標だった本300冊読破。結果は、274冊でした。まあ、達成できなかったけど、よくやったと思う。ここまで読むとは正直思ってなかった。
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