2012年2月4日土曜日
「カッコーの巣の上で」、「フィールドオブドリームス」、そして「たそがれ清兵衛」
この三作品はこれまで観てきた映画の中で特にいいと思った三つである。
しかし、くくりとしてたそがれ清兵衛 [Blu-ray]とフィールド・オブ・ドリームス [DVD]・カッコーの巣の上で [Blu-ray]は違うと最近不意に思った。
洋画の二作品はテーマが明確で、そのテーマは人間としてとても重要なものであると感じる。そして、その大切さをうまく表現している。
観ていて自分の未熟さを思い知らされたり、胸に熱いものがこみあげてくる。
しかし、たそがれ清兵衛 [Blu-ray]は違う。
初めて見たときの衝撃は覚えている。ちょうど公開された時に見た。
「映画っていうのは、こんなにも美しいものなのか!!」というのが観た感想だった。
上の二作品は人生の中での大事な部分をピックアップしてえがいている。つまり、切り取られた人生である。
しかし、たそがれ清兵衛 [Blu-ray]はあるがままの人生・生活をそのまま、特にどこかを誇張することもなく表現していると感じた。
そのあるがままの姿に”美”を感じた。
この作品のテーマは人により変わると思うが、私はこうとらえた。
「勉強と人が生きることとの関係」
である。
よく映画や小説などで、その作品の中で最も言いたいことを、その登場人物の誰かに言わせるということがある。
たそがれ清兵衛 [Blu-ray]においては、冒頭の部分。清兵衛の娘の口から発せられたと感じた。
「なんで勉強しないといけないの?」
だ。
決して裕福ではない清兵衛の家計。娘二人は寺子屋へ通っている。家計は厳しいが、一応武士ではあるからだろう、下人が一人いる。
時代は、黒船来航後のころ。時代の転換期である。
それから映画はいろいろストーリーが展開していくのだが、その中で、二人の男の姿が私の胸を打つ。
一人は、剣一筋で生きて、滅私奉公でやってきた男だ。しかし、くびになった彼は屋敷に立てこもり、連れ戻しに来た武士を切り殺している。その彼の説得のために清兵衛が赴くのだが、そこでのやり取り・チャンバラの後、最後にその男の放った言葉が、
「見えない。真っ暗だ、目の前が真っ暗だ…」みたいな言葉だった。
それまでは、剣の腕が評価の対象だった。しかし、黒船来航後、近代兵器が西洋から入ってきて、剣の時代ではなくなっていく。そんな時代背景のことを考えると、彼のことは仕方がなかったと思ってしまうが、どうだろう?
もう一人は、清兵衛の家の下人、男性である。清兵衛が外出する際には必ずお供し、どこかの屋敷に用事で清兵衛は入れるが、彼は門の外で縮こまって待つのである。さらに、どうやらあまり言葉が話せないらしい。決して病気か何かで話せないのではなく、生活するうえで自分から何か発言することがほとんどないのだろう。聞くことはできるが、ほとんど話さないのである。
この教養の差。
これまでは、雇われればそれ以外は考えなくてよかったということの象徴であろう。しかし、国家が根底から変わろうとする当時において、話せないのは、…どうなるんだこいつは…。と思ってしまう。
そしてエンディング。
清兵衛の娘が、洋服を着て明治政府の時代になった時から父のことを思うというシーン。
何があっても時代は変わっていく。その中で多くの人がのみこまれた。そんな状況では善も悪もない。ただただ、先へ向かうだけだ。
そして、新しい夜明け。
その過程には多くの屍がある。しかし、逆に富んでゆくものも多くいる。
西洋作品においては、善と悪との対立がどこかしら見え隠れする。それはそこに焦点が当たっているからで、言い換えれば視野が狭い。
たそがれ清兵衛 [Blu-ray]では、善も善とせず、悪も悪としない。すべてを変えた時代の変化。その変化に”美”を感じた。
しかも、その”美”をこうも鮮やかに、醜い部分も含みつつ、決して良い部分の描写が多い作品とは言えないが、人々の日常へ密着するという視点から、時代の変化までこうも焦点の遠近の幅が広い作品はお目にかかっていない。これがすごい。
わかるだろうか。こんなにも時代は変化するが、人間はそれでも生きてゆくという、人間の泥臭さも感じるのである。
本当に、綺麗な、細工の細かいガラス細工のような印象をこの作品から受けた。それは、その構成からカメラアングルなどまで、どれか一つでも違っていたらこんなにも壮大な人間の姿を表現はできなかっただろうと思うからだ。映画には詳しくないが、すごく美しいと感じた。
そして、時代は変わっても人間は生きてゆくのだが、その変化をどう乗り越えればいいのかも、その答えをこの作品の中で示している。
それが、冒頭の「なんで勉強しないといけないの?」だ。
このために人は勉強する。
生きていくために。
たとえ、どんなにおのれを取り巻く環境が変わろうともだ。
この、今ここにいるという自分という存在、この存在を最も確実なものにするために、我々は勉強するのである。
具体的には、環境の変化を敏感に察知し、素早く行動する。それを可能にするのが勉強だ。
情報収集・情報処理そして情報創造能力。
70年説という、70年で時代は変わるという考えをしている人がいる。
70年前は、戦争敗北の時、さらに前は幕末維新、ちょうどたそがれ清兵衛 [Blu-ray]の時代。
この変化の時代を、私は優雅に生き抜いてやります。
ハリウッドが映画産業においては群を抜いているが、彼らの発する情報に少し飽きてきました。もちろんいい作品もあるが、これから生きていくうえで、それは逆に足かせになるだろう。逆に、こういう時代もあったねと過去の参考文献として見るのがいいかも。
よって、人間の存在意義などとつまんないことを言っていないで、自分の生まれたこの時代を自分らしく生きぬいてみろよ。とたそがれ清兵衛 [Blu-ray]に言われた気がします。
そのためには、カッコーの巣の上で [Blu-ray]とフィールド・オブ・ドリームス 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]も観てて損はないと思います。
結論として三作品共に良いです。しかし、たそがれ清兵衛 [Blu-ray]はそこに”美”があります。
美しい、優雅な人生を♡
以上
またね***
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